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<title>猫と僕</title>
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<copyright>Copyright (c) 2002, 千歳</copyright>
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<title>レオ ８</title>
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<modified>2007-05-26T18:16:37Z</modified>
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<summary type="text/plain">植えなおされた花の下。</summary>
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<dc:subject>200_レオ</dc:subject>
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<![CDATA[<!-- autolink content -->
　非常にショッキングかつとても悲しいことに、レオがどっかの車に撥ねられて死んでしまいました。<br>
　夜、弟に呼ばれて家の外に出てみると、父が新聞紙になにやら包もうとしています。良く見るとそれがレオの亡骸でした。<br>
　しかし、パッと見ても、死んでいるようには見えません。外傷も見当たらず、まるで眠っているようでした。触ってみると、まだ暖かいのです。ひょっとして気絶しているだけじゃないだろうかと、何度か揺すって見ました。しかし、反応はありません。何回かそうしているうちに、舌がだらりと出てきて、わずかに血のにじんだ唾液がたれました。<br>
　そうか、死んでるんだな。千歳はようやく納得して、父がレオの亡骸を新聞紙に包んで持ち上げるのを黙って見つめました。<br>
「埋めてやらないかんなあ」<br>
　母が手入れをしている、庭だか畑だか良くわからない土地が家の横にあって、数年前、レオの母親が死んだときに埋めてあげた場所に、今ではコスモスが咲き乱れています。その横には、名前は忘れましたが母が植えた背の低い花が、コスモスに比べると多少控えめに咲いていました。その花を母が丁寧にどけるのを見届けてから、千歳と弟は穴を掘りはじめました。<br>
「浅いと匂いがきついから、深く掘らないかんぞ」<br>
　父がそういうので、深い穴を掘りました。<br>
　みんなが納得するだけ掘って、次にレオをそこに入れてやる順番になりました。千歳はもう一度、レオの頭をつついたり体をゆすってみたりしてみたのですが、やっぱり反応はありません。どうしたって、レオは死んでいました。動かないレオを穴の中に入れます。後は土をかぶせるだけです。土をかぶせたら、もうレオを見ることは出来ません。ひょっこりどっかから現れるということもありません。<br>
　それはとても淋しい事ですが、のんびりしていたら死後硬直が始まってしまいます。そうしたら体も今のようにきれいには丸まってくれないし、もっと大きな穴を掘らないといけなくなります。それに、硬くなったレオの死体は見たくありませんでした。最後にレオの頭をなでてから、千歳は弟と一緒におとなしく土をかぶせてやりました。<br>
　せっかく帰ってこれたのにな。<br>
　餌が毎日ちゃんと食べられるようになったのに。<br>
　こんなことなら、普段もっと頭をなでてやったらよかった。頭をなでられるのが好きな猫だったから。<br>
　土をこんもりのせると、雨で地面がへこまないように、足で土を踏んで地面を硬くしました。それからお祈りして、一家は家の中に戻りました。<br>
　次の日、レオを埋めた場所には、どけてあった花が植えなおされてありました。<br>]]>

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<title>レオ ７</title>
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<summary type="text/plain">家出がレオに与えた影響をエサに見る。</summary>
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<name>千歳</name>
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<dc:subject>200_レオ</dc:subject>
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<![CDATA[<!-- autolink content -->
　なんか母の証言によると、レオは墓場で発見時、虫を食っていたようです。<br>
　空を飛んでいた蛾に飛びついてパクリと食べたり、地を這っていたムカデを捕らえて食べたりしていたそうな。<br>
　あの、家出前はキャットフードもポロポロこぼしながら食ってた、野性味の微塵も感じられなかったあのレオがですよ？！<br>
　ちなみに現在は、たとえ餌をどんなに山盛り入れていてもとにかく全部食ってます。で、たまに食べ過ぎで吐いてます。<br>
　苦労してたんだなあ(T_T)<br>]]>

</content>
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<title>レオ ６</title>
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<summary type="text/plain">レオが戻ってきました。</summary>
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<![CDATA[<!-- autolink content -->
　レオが戻ってきました。<br>
　さすがにもう二度と、あの辛いだけの野良の日々に戻るのは嫌なようです。<br>
　それにこの猫、もともとが人間大好きの超寂しがり猫。雄猫の本能ももう気が済んだだろうし、我が家が恋しくないはずがありません。<br>
<Font Color="chocolate">「ニャー」</Font><br>
　ほら、千歳を見るなり足に擦り寄ってきます。もう、この甘えん坊やさんッ。<br>
　しかしまたいい感じに汚れているのは、レオのささやかな仕返しなのでしょうか。<br>
<br>
　また近いうちに洗ってやる。<br>]]>

</content>
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<title>レオ ５</title>
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<modified>2005-10-16T17:06:23Z</modified>
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<summary type="text/plain">レオが家出しました(T_T)</summary>
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<name>千歳</name>
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<![CDATA[<!-- autolink content -->
　レオが家出しました(T_T)　そんなに風呂が嫌だったかレオよ。]]>

</content>
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<title>レオ ４</title>
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<modified>2005-10-16T17:06:23Z</modified>
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<summary type="text/plain">風呂 VS レオ</summary>
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<dc:subject>200_レオ</dc:subject>
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<![CDATA[<!-- autolink content -->
　もうそろそろいいだろうということで、レオをついに風呂に入れました。<br>
　本当はもっと早くから風呂に入れたかったんですが――というのは本当にもう汚れきっていたので――猫が水嫌い、ひいては風呂嫌いというのはあまりにも有名な事実。うちのレオ至極まっとうに水が大っ嫌いなので、どうにかこうにか懐くようになったばかりの頃にそんな荒行を課してしまったら、また家出してしまうのではないかという危惧があったので、ずっと我慢していたのです。<br>
　けれど弟もノミノミうるさいし、風呂上りの俺の脚に汚れきった体を擦り付けてくるし、もういい加減うちにも慣れただろうと、全員一致で風呂に入れることにしました。<br>
　いざ洗ってみるとまあ汚い汚い！　排水溝ににごりきった水が後から後から流れ落ちていきます。<br>
　けどまあ今ではレオもさっぱりピカピカ。レオに対する家族の愛情も五割くらい増した気がします。<br>]]>

</content>
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<title>レオ ３</title>
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<modified>2005-10-16T17:06:23Z</modified>
<issued>2002-08-30T02:17:46Z</issued>
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<created>2002-08-30T02:17:46Z</created>
<summary type="text/plain">弟 ＶＳ レオ</summary>
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<name>千歳</name>
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<dc:subject>200_レオ</dc:subject>
<content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="en" xml:base="http://www.cat-and-i.com/">
<![CDATA[<!-- autolink content -->
　夕方家に帰ってくると、レオがいませんでした。<br>
　母が言うには、弟が追い出してしまったらしいのです。<br>
<Font Color="blue">「だってあの猫レオじゃないし、ノミがいるじゃん」</Font><br>
<Font Color="deeppink">「あんたがうちのノミようなものでしょ！　働かずにずっとパソコンばっかりやって！」</Font><br>
　母の雷が弟に落ちました。<br>
<Font Color="chocolate">「ニャー、ニャー、ニャー」</Font><br>
　そうこうしているうちにレオが帰ってきました。よかったよかった。<br>
「今度レオ追い出したらお前も追い出すぞ」<br>
<Font Color="blue">「…………」</Font><br>
　家族からレオと同列に扱われて、弟も少しはこたえるでしょうか。<br>
<br>
　いや、どうやら少しもこたえていないようです。相変わらずパソコン三昧、睡眠時間たっぷり、バイトほんの少しの日々を送る気満々です。まったく困ったものです=3<br>
<br>
　レオも、もうちょっとうちに慣れてきたら風呂に入れてやろう。<br>]]>

</content>
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<title>レオ ２</title>
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<modified>2005-10-16T17:06:23Z</modified>
<issued>2002-08-29T02:16:37Z</issued>
<id>tag:www.cat-and-i.com,2002://6.6304</id>
<created>2002-08-29T02:16:37Z</created>
<summary type="text/plain">本当にレオ！？</summary>
<author>
<name>千歳</name>
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<email>ckotoba@ckotoba.com</email>
</author>
<dc:subject>200_レオ</dc:subject>
<content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="en" xml:base="http://www.cat-and-i.com/">
<![CDATA[<!-- autolink content -->
　今日は母はウォーキングに出かけるときにキャットフードを持っていったということでしたが、帰ってきたときには戦利品に猫を一匹連れて帰っていました。<br>
　家の外で母がその猫にキャットフードをあげているところに、外出していた千歳は帰宅し、その猫を見て感想をもらします。<br>
「えらい痩せ細った猫だね」<br>
<Font Color="deeppink">「レオよ」</Font><br>
　母がそう答えました。え？<br>
　その猫は銀色の毛並みに縞模様がありました。確かにレオと似た毛並みですが、あの無邪気に丸々と太っっていたレオの面影はまるでありません。<br>
「マジで？」<br>
<Font Color="chocolate">「ニャー」</Font><br>
　千歳が近寄ろうとすると、その猫は慌てて車の下に逃げ込みます。<br>
　もしあの猫がレオだとすれば、もう三年も会っていなかった千歳の顔を忘れていることは確実です。<br>
「お墓で見つけたのよ。お墓を住処にして、そこでお供え物を食べて生きてたみたいね」<br>
「……誰かに見つかったら叩かれたりしただろうなあ」<br>
　それで、すっかり人に対して用心深くなったのでしょうか。あの猫が本当にレオだとすればですが。<br>
<Font Color="deeppink">「レオよ」</Font><br>
　母は言い切ります。<br>
<Font Color="deeppink">「……たぶん」</Font><br>
　いや、案外自信ないみたいです。<br>
　そんな話しをしているうちに、車の下に隠れていたレオがニャーニャー鳴きながら出てきました。千歳に擦り寄ってきます。<br>
　そこに弟がやってきました。<br>
<Font Color="blue">「なに、その猫？」</Font><br>
「レオだって」<br>
　千歳が言うと、弟は失笑します。<br>
<Font Color="blue">「レオじゃないって。レオは死んだんだから」</Font><br>
　弟は、レオが近所の猫嫌いに毒を盛られて死んだのだと思い込んでいます。<br>
<Font Color="blue">「それにほら、レオはもっとひげが長かったじゃん。この猫みたいにひげ短くなかったって」</Font><br>
　さすが弟。ひげの長さで猫を判別するなんて発想が凄いです。<br>
　まあ弟の意見は放っておいて、千歳はこの猫がレオかどうか、再検証することにしました。<br>
　確かにこの毛並みは独特で、そうそう見かけられるものではありません。尻尾が異常なほど長いのもレオの特徴でしたが、確かにこの猫の尻尾の長さも相当なものです。<br>
　レオは確か肉球が肌色だったな。千歳は猫の肉球の色を確認します。確かに肌色です。<br>
　それと、かなりの臆病者で、あと甘えん坊だった。<br>
<Font Color="chocolate">「ニャー、ニャー、ニャー」</Font><br>
　猫は千歳が多少強引に肉球の色を確かめたのにびっくりして、また車の下に隠れていました。けど、ずっと何かを訴えるように鳴き続けています。<br>
　そうして、また恐る恐る車の下からでてきて、千歳に擦り寄ってくるのです。<br>
　人が恐い――けど甘えたいといった様子です。<br>
「……確かにレオかも」<br>
<Font Color="deeppink">「でしょ？」</Font><br>
<Font Color="blue">「いや、レオじゃない。たぶんレオの息子や」</Font><br>
　またまた弟が言い切ります。相変わらずもの凄い発想です。<br>
　そこに父が仕事から帰ってきました。猫を見るなり言います。<br>
<Font Color="green">「お、レオが帰ってきたか。どこにいたんだ？」</Font><br>
「………………」<br>
<Font Color="deeppink">「………………」</Font><br>
<Font Color="blue">「……レオじゃないって」</Font><br>
<Font Color="chocolate">「ニャー、ニャー、ニャー」</Font><br>
<br>
　話し合いの末、とりあえず、この猫がレオかどうか確かめようということになりました。<br>
　しかし記憶にあるレオと比べて、あまりにもこの猫が痩せている為、100％レオであるという確信を、父以外の誰も持っていないのが現状です。しかし同時に、レオでないという確信も、弟以外の誰も持っていないのです。<br>
　だから、この猫がレオなのかどうか、実際太らせてみて確かめる作戦です。<br>
　というわけでこの臆病で人懐っこい猫は、レオという名を暫定的につけられ、濱田家で餌を与えられる事になりました。<br>]]>

</content>
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<title>レオ １</title>
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<modified>2005-10-16T17:06:23Z</modified>
<issued>2002-08-27T02:13:27Z</issued>
<id>tag:www.cat-and-i.com,2002://6.6303</id>
<created>2002-08-27T02:13:27Z</created>
<summary type="text/plain">家出したレオが見つかった！？</summary>
<author>
<name>千歳</name>
<url>http://www.ckotoba.com/</url>
<email>ckotoba@ckotoba.com</email>
</author>
<dc:subject>200_レオ</dc:subject>
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<![CDATA[<!-- autolink content -->
　うちの母が、<br>
<Font Color="deeppink">「近所<B>でレオ</B>を見かけた」</Font><br>
　と言い出しました。<br>
　レオといえば、【エッセイ　窓の外】でも紹介した、ネコの息子の一人です。<br>
　千歳が名古屋に行っている間に、<B>雄猫の本能</B>が働いたらしく<B>家出した</B>という話でしたが、なんでも、母が<B>ダイエット</B>を目的として毎夜行っているウォーキング中に、<br>
<Font Color="chocolate">「ニャー」</Font><br>
　と鳴き声がして、声のしたほうによくよく目を凝らしてみると、そこに銀色の毛並みに縞模様の痩せた猫がいたということなのです。<br>
<Font Color="deeppink">「あんな毛並みの猫なんてそんないるもんじゃないし、あれは絶対レオよ」</Font><br>
　母はそう主張しますが、なにぶん実物を見てみないことには、千歳も確信がもてません。<br>
　だいたいが、<B>母の散歩コース内で発見</B>なんて、<B>家出して一年以上が経過</B>しているにしては、いくらなんでも<B>近すぎ</B>ます。ぬくぬくとした環境をわざわざ捨てて、雄の本能のおもむくままに家を出たんですから、さすがにもっと遠くのどこかで、<B>たくましく生きている</B>ものだろうと千歳は思います。<br>
<Font Color="deeppink">「また明日行って見てくるわ」</Font><br>
　ということで、この話は続くかもしれません。<br>
<!--<mtimg src="/reo/reo01_01.jpg" thusrc="/reo/thu-reo01_01.jpg" />-->]]>

</content>
</entry>
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<title>エッセイ　誕生</title>
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<modified>2005-10-16T17:06:23Z</modified>
<issued>2002-05-26T02:08:56Z</issued>
<id>tag:www.cat-and-i.com,2002://6.6302</id>
<created>2002-05-26T02:08:56Z</created>
<summary type="text/plain">ネコが僕のお腹の上で子供を産んだ時のお話。超びっくりした……</summary>
<author>
<name>千歳</name>
<url>http://www.ckotoba.com/</url>
<email>ckotoba@ckotoba.com</email>
</author>
<dc:subject>100_ネコ</dc:subject>
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<![CDATA[<span style="font-family:'ＭＳ Ｐ明朝','平成明朝',serif;">
　どうもうちの飼い猫が妊娠しているらしいと気がついたのは、ある冬の夜だったように記憶しています。<Br>
　家族で集まってテレビを見ていた時でした。飼い猫――名前を『ネコ』といいます――が、六つある乳首の周りの毛をむしり取っていたのを、父が目ざとく発見したんですね。<Br>
　父は少年時代、猫だけでなく犬やニワトリやウズラやいろんな小鳥や、その他様々なペットを飼ってきたという経歴があります。さすがにこういったことに気づくのは早いです。<Br>
「前に、三日くらい帰ってこなかった事があったやろう。その時から怪しいと思いよった」<Br>
　と、父は得意げに言います。<Br>
　そういえば、最近ネコがえらく太ってきたなとは、千歳も思っていました。その少し前まではよく食べたものを吐き出していたりもしてたんで、考えてみれば妊娠の兆候はものすごくはっきりとあったといえます。だいたい、外出が許可されるようになってからというもの、ネコは雨の日以外は毎日どこかにお出かけしていました。確かにどこでなにがあってもおかしくはありません。<Br>
　しかしまさか外に出かけたネコが妊婦になって帰ってくるなんて、千歳にとってその事実は完全に想像の外でした。<Br>
<Br>
　ガーン！<Br>
<Br>
　まさに、突然娘に妊娠を告げられたパパの心境です。<Br>
　うちの娘に限って。というやつですね。<Br>
「いったいどこの馬の骨だ！」<Br>
　千歳は憤ります。人様の娘を勝手に妊娠させておいて、これまで挨拶にも来たことがないとは、どう考えてもろくな男ではありません。<Br>
「馬の骨というか、猫やけどね」<Br>
　弟の冷静なつっこみもこの際無視です。<Br>
「俺は認めん。認めんぞ！」<Br>
　しかし、認める認めない以前に男が現れないのでは、もう、どうしようもありません。<Br>
　ネコも生む気まんまんだし、結局家族に出来るのは出産に出来る限り協力する事だけでした。<Br>
　しかし、濱田家でペットの二世が誕生するなどということは、これまで起きたことがありませんでした。ふってわいた大イベントに、濱田家は慌てふためきます。協力といっても、なにを協力すればいいのやら……<Br>
<Br>
「だいじょうぶ。ほっといたら勝手に産むって」<Br>
　とは父の言うことです。そう、濱田家の中で、ただ一人父だけは全く動じていませんでした。<Br>
　実はこの頃、父は裏庭で、ニワトリを数匹飼っていました。最近そのニワトリの一匹がイタチに襲われて重症を負ったということで、どっちかというとそっちの方にピリピリしているようです。<Br>
「小屋の下に穴を掘って侵入したがよ。やつは俺のニワトリを食うつもりや」<Br>
　……オス猫とイタチとでは「食べる」の意味がまったく違っているようです。<Br>
　父はたぶん今までペットの出産は何度も経験してきて慣れっこなんだろうし、確かに父の大事にしているニワトリがイタチに食われそうになって重症では、ネコの出産にかまってられる心境じゃないのというのも分からないでもありません。<Br>
　というわけで、今後ネコの出産に関しては、父を除いた家族の間で話し合われることになりました。<Br>
<Br>
「やっぱり寝床が必要やろう」<Br>
　というのは、誰が言うでもなく自然と行き着いた結論でした。出産する場所というのは、そのまま子猫を育てる場所にもなるだろうし、大変重要といえます。そこで、出産用の寝床を用意することになりました。<Br>
　ちょうど良い感じのダンボールをどっかからか用意してきて、古いタオルとか、毛布とかで寝床を作ります。うん、いい感じです。<Br>
「けど、ネコはこの寝床使ってくれるかな」<Br>
　弟が不安を口にします。<Br>
　確かにせっかく寝床を作っても、とうのネコがそれを利用しなかったら意味がありません。<Br>
　千歳に妙案が浮かびました。<Br>
「……昔、ネコにトイレの場所を教えるときに、何回もトイレまでネコを連れて行って、そこで繰り返し用を足させて、それでようやくトイレを覚えこました事があったやろう」<Br>
「うん、あったねえ。けっこうすぐ覚えたよね」<Br>
「今回もその手でいこう」<Br>
　というわけで、濱田家の人間はそれからというものネコを見かけるたびに、新しく作った寝床にネコを無理やり寝かしつけるようになりました。<Br>
　しかし、もともと猫は気ままな動物ですので、強引に寝かしつけてもすぐにどっかに行ってしまいます。<Br>
「だめか……」<Br>
　千歳の作戦はあえなく失敗に終ったようです。<Br>
<Br>
「ネコが積極的に使おうとしないとダメなんじゃない？　強引に寝かそうとしても、なかなか寝んやろ」<Br>
　弟の意見も最もです。<Br>
「……うーん、じゃあちょっと工夫して……うん、これならいけるやろう」<Br>
　次の妙案を、千歳は実行に移しました。<Br>
　それはネコの餌を、寝床に持ってくるという方法でした。これでネコは餌目当てに寝床に必ずやってくるはずです。<Br>
「にゃー」<Br>
　ほらほら、やってきましたよ。<Br>
　ムシャムシャ。<Br>
　食べてる食べてる。<Br>
「にゃー」<Br>
　あれ？　餌を食べると、ネコはまたどっかに行ってしまいました。どうやらネコは、出産用に作った寝床を、新しい食事場所と認識してしまったようです。確かに、満腹になってしまえば食事場所に用はありません。用があるのはお腹がすいたときだけです。<Br>
「だめか、だめなのか……？」<Br>
　認めたくはありませんが、千歳の作戦は今回も失敗のようでした。<Br>
<Br>
「やっぱり、新しい寝床が出産にちょうどいいって、ネコが納得せんといかんがじゃない？」<Br>
　弟の意見も最もです。<Br>
「うーん、じゃあ場所を変えてみるか」<Br>
　もともと猫は、生まれてくる子猫を外的から守るために、出産の場所や、子猫を育てる場所には非常に気を使います。当然ひとけのない、静かな場所を好むはずでした。なので家の中でも、あまり人が通らない、静かな場所を考えてみました。<Br>
　まず、やはり玄関や廊下は問題外です。家に出入りするために必ず通る場所なので、ネコが落ち着けるはずがありません。同じ理由で個人の部屋もダメです。台所もうるさいし、リビングも人が集まる場所なのでダメです。……なんか色々考えていくうちに、この狭い家は、ネコが子猫を生んで育てるにはあまり向かない家なんだなということがだんだんと見えてきました。<Br>
　となると、ひょっとしてネコが外で子供を産むという可能性も出てきます。うーん、そうなるとせっかく生まれた子猫が見られなくなってしまうので、千歳としては非常に不本意です。それに、確かに絶えず誰かいるようなこの家は騒がしくて、ネコが出産には向かないと判断しても仕方がないかもしれませんが、子猫たちにとって、一番安全な場所は間違いなくこの濱田家だと、千歳は断言できます。もうすでに子猫の離乳食も買ってあります。出産したてで食欲に影響が出ているだろうネコのために、産後の猫に優しい食べ物も用意しました。ネコの初めての出産に少しでも助けになるよう、あらゆる手をつくし、今もなにが必要かを模索し続けています。<Br>
<Br>
　結局、家族で相談したうえで、リビングルームの家具の配置を変えて、ネコの部屋を作ることになりました。冬なので温度が急激に変化しないよう、窓から離れた壁際に寝床を設置し、そこをあまり人目につかないように家具などで隠して、ネコが落ち着いて子育てができる環境作りに心をくだきます。<Br>
　それでようやく完成した新しい寝床には、ネコもついに満足してくれたようでした。ネコが新しい寝床で丸くなっているのを、良く見かけるようになりました。よかったよかった。<Br>
<Br>
「もうすぐおまえもママになるんやなあ」<Br>
　寝床で丸くなっているネコの頭を撫でながら、ふと千歳は昔を思い返していました。<Br>
　ある日、母が子猫を連れて帰ってきました。目がパッチリしていて、白い毛並みに青みがかった銀色の縞模様の、とても可愛い子猫でした。『ネコ』と名づけられたこの子猫はすごく人懐っこくて、食べ物をねだったり、「遊んで」と催促するのが得意でした。<Br>
　千歳が家に帰ってくるといつもどこからか走ってきて、玄関にちょこんと座って千歳を出迎えてくれました。<Br>
　――なんて不思議なんだろう。あのちっちゃな子猫が、もうすぐ親になろうとしています。<Br>
「安心して産めよー」<Br>
　おまえの子供はうちの家族だから。みんなから祝福されて生まれてくるからね。<Br>
<Br>
　それからまた何日も過ぎました。ネコのお腹も随分大きくなって、出産が近いことを感じさせます。そんなある夜のことです。千歳が生涯忘れられないであろう、あの事件が起こったのは。<Br>
<Br>
　それは寒い日の夜のことでした。千歳は、いつものように自分の部屋で眠りについていました。<Br>
　夜中に、なぜか千歳は目を覚ましました。千歳が夜に目を覚ますときは、たいていトイレをもよおしたときなのですが、特にそんな様子もありません。なので、千歳はまたうとうとと、再び眠りの中に身をおこうとしていました。そのときです。<Br>
　どこからか、猫の鳴き声が聞こえてくるような気がしました。それはとてもか細い、か弱い鳴き声でした。<Br>
（ネコが鳴いてる……？　こんな夜中になんやろう。ひょっとして家に入れんのかな？）<Br>
　ネコはいつも階段の踊り場にある窓から家に出入りします。その窓を閉めてしまって、ネコが出入りできなくなっている事が、今までも何度かありました。<Br>
（……だったら開けてやらんと。外は寒いし……）<Br>
　しかし、基本的に千歳は非常に寝起きが悪いです。起き抜けは、そう簡単に体が動いてくれません。それに、なんだかその日は、なんとなく体がいつもより重たく感じました。<Br>
　そんな感じで千歳がもたもたしている間に、また猫の鳴き声が聞こえます。<Br>
　あれ？　この泣き声、案外近くないか？<Br>
（……なんだ、俺の部屋にいるのか）<Br>
　いえ、千歳の部屋というよりは、むしろ千歳の上から聞こえてくるようです。<Br>
（……おれの布団の上、ていうか腹の上……？）<Br>
　布団をはさんだ千歳のお腹の上辺りで、どうやらネコが鳴いているようです。しかし、その声はネコにしては幼いように感じました。「にゃー」というよりは、「みー」と聞こえます。それも一つではなく、明らかに複数――<Br>
「みー、みー、みー」<Br>
　え、え、えええ？？？<Br>
　とんでもない可能性に、千歳はパッチリと目を覚ましました。跳ね起きようとして寸前で思い直し、首だけ動かして自分のお腹の辺りをそろそろと確認します。お腹の上にはネコがいました。暗闇の中で、二つの目が光っています。<Br>
「みー、みー、みー」<Br>
　目を凝らして、やっと千歳は鳴き声の正体を視認しました。赤ちゃん猫が三匹、寝そべってこっちを向いているネコのお腹の辺りでもぞもぞしています。<Br>
「……お前、ここで、産んだのか……？！」<Br>
　なんと信じられないことに、ネコは千歳の部屋――それも布団と毛布のみを隔てた、千歳のお腹の真上あたりで出産していたのでした！<Br>
「にゃー」<Br>
　ネコが千歳を見て鳴きました。なんとなく、その声に誇らしげなものを感じたのは、千歳の気のせいでしょうか。<Br>
　たたた、大変だあ！<Br>
　千歳はそろりそろりと、布団から抜け出し、隣の部屋で熟睡している母をためらうことなく叩き起こしました。<Br>
「お、おかあさん！　ネコが子供産んだ！」<Br>
　母は飛び起きます。<Br>
「ええ、どこよ！？」<Br>
「俺の腹の上！」<Br>
「――はあ？」<Br>
　母を千歳の部屋までつれてくると、もう一目瞭然です。薄い明かりをつけた部屋の、千歳の布団の上で、ネコと三匹の赤ちゃんネコが、とても幸せな情景を作り出しています。<Br>
「――まあ驚いた！」<Br>
　俺はもっと驚いたよ。<Br>
<Br>
　とりあえずその日の夜は、千歳はもう一つ布団をひいて、その布団で寝ることになりました。もとの千歳の布団はネコが子供産んでるし、それがなくても血だらけで、さすがにそこで寝る気にはなれません。冬じゃなかったら――つまりもっと布団が薄かったら、千歳も血だらけになっていたのは確実でした。<Br>
<Br>
　朝起きてみると、赤ちゃんネコの数は四匹に増えていました。そして千歳が夕方帰宅すると、なんと五匹に増えていました。<Br>
「少し前に五匹目が生まれたよ。たぶんもう終わりやと思うけど、最後の一匹は時間かかったねえ」<Br>
　と、母が言いました。出産ってけっこう時間がかかるもんなんだと、このとき始めて千歳は知りました。もっと続けざまに生まれてくるもんだと、そのときまでは漠然と考えていたのです。<Br>
　ネコは、今は家族で苦心して作った、新しい寝床に身を横たえています。母が運んだんだそうです。ネコのお腹のあたりで、もぞもぞと誕生したばかりの生命たちが息づいています。<Br>
　千歳は時間が経つのも忘れて、ネコと新しい生命に見入りました。<Br>
「……あれ？　この一匹元気ないね。寝てるがかな？」<Br>
　千歳は一匹の赤ちゃん猫を指差しました。それは白一色の毛並みの赤ちゃん猫でした。他の赤ちゃん猫たちが一生懸命、親猫のおっぱいを吸っているのに、この赤ちゃん猫だけぐったりとしてあまり動きません。<Br>
「その子が一番最後に生まれたがよ。けど元気がないがよねえ。やっぱり、お腹に居る時間が長すぎたろうか」<Br>
「乳は吸うたが？」<Br>
　千歳の問いに母は首を振ります。<Br>
　生まれたばかりの赤ちゃんネコが、おっぱいも吸わずぐったりとしていれば、もうその先は分かりきっています。<Br>
　千歳はその赤ちゃん猫を手に持ちました。手に持った赤ちゃん猫に、ネコの乳房の一つをあてがいます。けれど、手の中の赤ちゃん猫はおっぱいを吸おうとはしません。<Br>
「ほら、吸えよ。吸わんと死ぬぞ」<Br>
　千歳は赤ちゃん猫の閉じられた口に、無理やり乳房を詰め込もうとしました。しかしうまく入りません。千歳は他の、一心不乱に別の乳房を吸っている赤ちゃん猫の一匹を、無理やりその乳房から引き離しました。<Br>
「みー」<Br>
　ごめんよ。けどお前はもうけっこう飲んだろう？<Br>
　ちょっと、この兄弟にも分けてあげてくれ。<Br>
　今まで吸われていた乳房は大きく腫れ上がっていて、さっきの乳房よりはずいぶん吸いやすそうでした。その乳房に、ぐったりした赤ちゃん猫の口を押し付けます。<Br>
　さっき引き離した赤ちゃん猫は、母が別の乳房に誘導してあげていました。目もまだ開いていない赤ちゃん猫は、自力で乳房を見つけるのことが、とても大変なのです。<Br>
「ほら、ここにおっぱいがあるぞ。がんばって吸わないかん」<Br>
　けれど乳を飲もうとしない赤ちゃん猫に、今度はぬれたティッシュを持ってきて、その口元を濡らしてみました。それが刺激になればと思ったのです。<Br>
「みー」<Br>
　手の中の赤ちゃん猫が、弱々しく鳴きました。<Br>
　この子は生きている。そう千歳は実感しました。<Br>
　だったら、生きている間は、がんばって生きようとしなければなりません。また千歳は赤ちゃん猫の口を、吸いやすそうな乳房に押し付けました。ほら、がんばれ！<Br>
<Br>
「みー」<Br>
　30分くらいはそんなことをしていたでしょうか。赤ちゃん猫が、またか弱い鳴き声をあげました。<Br>
　すかさず、うっすらと開いた口に、乳房を滑り込ませます。すると、赤ちゃん猫がゆっくりと乳を吸い始めたではありませんか！　最初はそれでも弱々しかった乳を吸う口元の動きは、次第にしっかりとしたものになっていきました。しばらくもすると、その赤ちゃん猫は、他の赤ちゃん猫と変わらないくらいしっかりと乳を吸うようになりました。<Br>
　よかった。<Br>
　きっと、もうだいじょうぶ。<Br>
　目も見えず、大きさも母猫の前足くらいしかない、まったくなにも出来そうにない赤ちゃん猫は、それでもただ庇護されて生きているだけではないのです。母親のぬくもりだけを頼りに、手探りで乳房を見つけ出し、こうして力いっぱい乳を吸わなければなりません。<Br>
「がんばれよ」<Br>
　その言葉は、そのまま自分自身に帰ってくるようでした。<Br>
<Br>
「けどネコも、よっぽど淋しがり屋の猫やねえ」<Br>
　母が言いました。<Br>
「やっぱりはじめてのお産やし、心細かったんやろう。だからあんたのお腹の上で産んだんやね」<Br>
「……なるほど」<Br>
　ネコにとって一番安心できる場所は、どうやら外でも、今寝そべっているこの寝床でも、ひとけのないどこかでもなく、千歳のお腹の上だったようです。それは千歳にとっては、なんだかとても嬉しい、誇らしくさえ感じる事実でした。<Br>
「よくがんばったなあ」<Br>
　千歳はそう言って、ネコの頭を撫でてあげました。ネコは目を細めてゴロゴロと喉を鳴らしています。<Br>
　ネコって嬉しいときは、喉をゴロゴロ鳴らすっていうのはご存知でしょうか。この時、ネコは千歳に頭を撫でられたから喉を鳴らしているのではありませんでした。だって赤ちゃん猫におっぱいをあげている間中、ネコはずっとゴロゴロと喉を鳴らしていましたから。<Br>
「元気に育てよー」<Br>
　そして幸せに生きてほしい。<Br>
　猫って生まれても、人間よりずっと早く死んでしまうけど――それは確かにとても悲しいことだけど、悪いことばかりではないと千歳は思います。だって、人より早く死ぬのなら、猫の幸せな一生を、飼い主は最後まで見届けることが出来るでしょう？<Br>
「この猫は幸せに生きたよ」そう言えるのだったら、それは確かに猫の主人にとっても幸せなことだと、千歳には思えるのです。<Br>
<Br>
　この日生まれた猫たちは、その後猫好きの家に貰われていったり、成猫になってから自分のナワバリを求めて家出したりと、結局濱田家に最後まで残った猫は一匹もいませんでした。けれど、きっとどこかで新たな飼い主に幸せを与えていると、千歳は思うようにしています。濱田家で生まれた猫は人懐っこくて、人を幸せにするのがとても得意な猫ばかりですから。<Br>
　うちのネコがそうであったように。<Br>
</span>
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<title>エッセイ　窓の外</title>
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<modified>2005-10-16T17:06:23Z</modified>
<issued>2001-11-26T02:03:32Z</issued>
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<summary type="text/plain">うちで飼い始めた子猫が、ある日僕に教えてくれた事。</summary>
<author>
<name>千歳</name>
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<email>ckotoba@ckotoba.com</email>
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<dc:subject>100_ネコ</dc:subject>
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<![CDATA[<span style="font-family:'ＭＳ Ｐ明朝','平成明朝',serif;">
「ミー」<br>
　尻尾をたて、よちよちと千歳の手に向かってくる子猫に、千歳は自然に顔がにやけてくるのを抑えきれませんでした。<br>
　なんてかわいいんだろう！<br>
「かわいいやろ」<br>
　母がニコニコしながら言います。<br>
「やっぱりこの子貰ってきて正解やったね」<br>
　得意げな母の様子に、千歳は素直にうなずきます。<br>
「うん、良い猫やねー」<br>
　ある日唐突に家にやってきて、そのまま家族になった子猫は、アメリカンショートヘアとペルシャ猫との間に生まれた雑種という、血統がいいのかどうだか良くわからない生まれの子猫で、白い毛並みに、アメリカンショーヘアを思わせる青みがかった銀色の縞の女の子でした。<br>
　目なんかパッチリとしてて、人懐っこくて、やってきたなり濱田家の人間全員を虜にしてしまいました。<br>
「ミー」<br>
　子猫は一所懸命千歳の手によじ登ろうとしています。<br>
「ミー」<br>
　コロリ。<br>
　肢を滑らして転んでしまいました。<br>
「名前どうしようか」<br>
　にやけていた千歳に母が言いました。<br>
「……名前か。どうしようね」<br>
「ミー」<br>
　転んだ子猫のお腹をくすぐると、子猫はわたわたと四本全部の足をばたつかせ、千歳の手にじゃれつきます。ちっちゃくてするどい爪に引っかかれて千歳の手は細かい傷だらけですが、子猫をじゃらすのをやめる気にはぜんぜんなりませんでした。<br>
<br>
　翌日、母によって、子猫の名前は『ネコ』に決まりました。<br>
　年号が平成に変わって間もないころ、秋篠宮が嫁さんをもらったことによる『紀子様ブーム』というものがあり、当時多くの主婦の例に漏れず、母は熱狂的に二人を祝福していました。このころはそれからすでに数年が経過していて、紀子様もすでに女児なんか出産されていましたが、母は、当時の興奮をまだ忘れてなかったのです。<br>
「良く寝る子だから『寝る子』と書いて『ネコ』。紀子様にあやかってね。良い名前やろ」<br>
　そうか？<br>
　千歳にはとてもそうは思えなかったので反対しましたが、だからといって他に名前を用意していたわけではありません。それに代わる案を持たない者の反対意見ほど、軽視されてしかるべきものはなく、結局千歳の反対は潰されてしまい、子猫の名前は『ネコ』に決まりました。<br>
　しかし。<br>
「ミー」<br>
「…………」<br>
　結局名前がなにになっても、かわいいものはかわいいのです。<br>
　家族の愛に守られ、ネコはすくすくと育っていきました。<br>
<br>
　ネコも生後数ヶ月も経つと、家の中のたいていの場所には自力でいけるようになりました。階段なんか颯爽と駆け上ります。そしてそのころが一番やんちゃな時期でもあり、家の壁はすでにネコの引っかき傷だらけでした。籐家具なんか目も当てられません。<br>
　母はご立腹でしたが、それでも愛らしいまなざしで見つめられるとついつい何でも許してしまうのです。多少過保護に――大事にネコは育てられました。<br>
　ところで千歳は、前世は猫だったのではないかと思うほど、猫のあらゆる行動に共感がもてます。そのせいなのかどうなのか、世の多くの猫にも何故か好かれる傾向にありました。<br>
　道端でボケーとしてると、気がつくと野良猫が何匹も集まってじっとこっちを見てたりすることもざらにあったりして、ペットショップの店員なんかになればひょっとしたらカリスマ店員にでもなっていたのではないかと思っていたりします。<br>
　ネコも、人間の中で千歳に一番なついていて、夜は、部屋の扉を開けておくとたいていいつも千歳のベッドまで来て丸くなるのでした。<br>
　朝はいつもネコが千歳の上に乗って、千歳の胸のあたりを前足でフミフミして起こしてきます。目覚し時計はいりませんでしたが、休みの日は起きたくもない時間に起こされたりして、それが少しだけ鬱陶しかったかな。<br>
<br>
　また、ネコに対して、いろいろ気をつけなければならない部分もありました。<br>
　まずひとつとして、なぜかタバコの灰を舐めたがるのです。まず灰皿の匂いを嗅いで、それからおもむろに灰を舐め始めるのでした。なんで灰なんか舐めるのか、前世が猫じゃないかと思っている千歳にもわけがわかりません。とにかく体に良いわけもないので、灰皿は、ネコの目が届く場所には置かないように気をつけなければなりませんでした。<br>
　あとコタツ布団のワタが好きでした。<br>
　濱田家は大して裕福ではないので、千歳の部屋にあるコタツにかけているコタツ布団は、ワタが化学繊維の安物でした。また、一部が破けていて、そこから中のワタがのぞいていたのですが、なぜかそこに頭を突っ込むのです。<br>
　放っておくといつまでも突っ込みっぱなしで、むりやりコタツから引き離すと、目を閉じ、陶酔しているかのような表情。完璧イッてます。化学繊維の中にヤバイ物質でも混ざっているのでしょうか。とにかくこれもあんまり体によさそうな気がしないので、ネコがコタツ布団に頭を突っ込まないようにも気をつけなければなりませんでした。<br>
<br>
　それとやはり猫なので、『寝子』という名の通り、非常に良く寝ました。なにかで読んだ本によると、猫は、特に子猫の頃は一日の三分の二をも寝て過ごすそうです。ネコも、寝るか食うか暴れるかの日々で、そういう意味では非常に自由に、気ままに生きているように千歳には見えました。<br>
　そしてその頃、千歳は少し憂鬱な気分で日々を過ごしていました。<br>
<br>
　いつものように専門学校から家に帰ると、その日もネコが玄関まで迎えに来てくれました。うちの両親は共働きで、またその頃弟は遠い学校で寮暮らしをしていましたから、千歳が学校から帰るまで、ネコは家で一人きりのことが多かったのです。だから千歳が帰ると、家の中のどこにいても――たぶん寝ていても飛んできます。<br>
「おーよしよし、さびしかったかー」<br>
「ミャー」<br>
　すりすりと、ネコは歩く千歳の足に擦り寄ってきます。ネコを踏まないように注意しながら、千歳は部屋着に着替えたりエアコンをつけたりテレビをつけたりしてくつろぐ環境をととのえます。<br>
そうして、ベッドに寝転んで一息つくのでした。<br>
（……もうすぐだな）<br>
　春になると、千歳は学校を卒業し、社会人として働かなければいけませんでした。<br>
　十数年間学生として生きてきた生活が、ついに大きく変わるときが、もうそこまでやってきています。<br>
　ネコに共感できるくらいですから、はっきり言って千歳は働くのが好きではありません.<br>
自分の時間が削られるのは大嫌いです。<br>
（社会に出ると、もう夏休みとかないんだよなー）<br>
　そう考えると、働くのが嫌でいやでたまりませんでした。<br>
「ミャー」<br>
　慰めるように、ネコが寝転んでいる千歳の手を舐めました。<br>
「……お前はいいな。自由で。働かなくてもいいんだよな。食っちゃ寝食っちゃ寝、気楽な毎日だ」<br>
　そんな愚痴をこぼしながら、頭をなでてやります。ゴロゴロ。ネコはうれしそうに喉を鳴らします。<br>
「俺もお前みたいに、働かないで毎日気楽に生きていたいよ……」<br>
　そんな愚痴めいたことを言っていたら、ネコは千歳の手のそばから離れ、窓の近くに行きました。<br>
　そうして窓に顔をくっつけるようにして、じっと何かを見ている様子です。<br>
　このところネコはそうやって窓の外を見ることが多くなっていました。ふと興味を引かれた千歳は、いっしょになって窓の外を眺めてみました。<br>
　窓の外には、見慣れたいつもの景色が広がっていました。<br>
　千歳は気づきました。<br>
「……そうか、外に出てみたいのか」<br>
　ネコは、今まで一度も家の外に出たことがありません。<br>
　外は危険がいっぱいなので、出さないようにしていたのです。<br>
　窓から見えるのは、千歳にとっては見慣れた、何のことはない景色でした。そしてそれは、ネコにとってもやっぱり見慣れた景色だったのでしょう。しかしネコは、実際にそこに行ったことはありません。<br>
　ネコの『直接行った事のない景色』と、千歳の『出たことのない社会』が重なったような気がして、千歳は苦笑しました。そして、自分の今の思いに、その時初めて違和感を覚えました。<br>
　以前は、社会に出て働くことを考えると、こんな憂鬱な気分になったりはせずに、もっと単純にわくわくしていたような気がします。<br>
<br>
　――そうか。<br>
<br>
　千歳は気がつきました。<br>
　一年後の未来。二年後の未来。自分がこれからやっていきたいこと。幼い頃夢見ていた、大人になった自分――。そんなことを考えるのが、昔は楽しくて仕方がなかった。<br>
（けどそれは、夢と未来が同一であると、信じていられたからだ）<br>
　生きていくうちに、千歳は認識するようになりました。夢＝未来ではないことを。<br>
　自分の思い通りにならない未来なんてつまらない。<br>
　そんな失望が、いつの間にか千歳に未来を思うことをさせなくしていたのです。<br>
<br>
　けど、違うのだ。<br>
　窓の外をただじっと見つめる子猫が、それを千歳に教えてくれています。<br>
　ネコが、思い通りの未来を期待して、外を見ているわけがありません。<br>
　そこに行ったことのない場所があるから、自分の知らない世界があるから、だからネコは外を見ているのでしょう。<br>
　千歳は窓の外を見ながら、少し先の自分の未来を思い描いて見ました。たぶん、あんまり思い通りにはならない未来を。<br>
　ささやかな成功と、多くの挫折。きっとそんな感じだ。恥をかいたり、いろんな失敗を繰り返したりしながら、それでも生きていく。<br>
　厳しくて、刺激的で、無限を秘めた未来――<br>
<br>
　なんだ。<br>
　けっこう楽しいかも。<br>
<br>
（なんで俺、今まで憂鬱だったんだろう）<br>
　今まで暗い気分だったのがバカみたいに思えて、千歳は思わず声を出して笑ってしまいました。<br>
<br>
　あいかわらずネコは外を眺めています。<br>
「……外に行きたいか？」<br>
「ミャー」<br>
「じゃあ、お母さんに頼んでみてやるよ。けど車とか気をつけろよ。危ないとこは行っちゃいかんぞ」<br>
「ミャー」<br>
　千歳とネコに等しく広がる、きっとやさしいばかりではない――けど期待に胸膨らませずにはいられない未来。それを考え、千歳は思わずネコを抱き上げました。<br>
　――そうだ。<br>
「今度海に連れていってやるよ」<br>
　暖かい、天気の良い日に自転車のカゴにでも乗せて。<br>
　潮の匂いのする風に向かって、長い下り坂をくだってちょっと行けばすぐ海だから。<br>
　天気の日の海ほどキレイなものはないんだぞ。青い空が海に映って、空が二つあるみたいに海が青く輝いていて。<br>
　浜でそんな海に向かって、猫のように伸びをして、潮風を大きく吸い込んで――<br>
　それだけでもう、泣きたくなるほど幸せな気分になるんだ。<br>
</span>
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